意外と知らない「ABCストア」の話

ハワイ、とくにオアフ島のワイキキに滞在中は誰でもお世話になると言ってもいいのが、青い丸に白文字の「ABC」ロゴが目印のあのコンビニ……そう、ABCストア(ABC STORES)です。
日常的に水やスナックを買ったり、ビーチに行く時は浮き輪やゴザを調達し、フロートに空気を入れてもらう人もいるかもしれません。(筆者も一日の最後は必ずと言っていいほどABCに行きます。ホテルに帰ってから楽しむビールや小腹がすいた時のスパムおにぎり、そして次の日の朝食用に、スタバの瓶コーヒー、フレッシュパパイヤ、Chobaniヨーグルト。スイカ味のハイチュウとか、色々と買い込んでいます)

ワイキキを歩くと「なんでこんなにお店があるのか」と不思議になってくるほど、私たち日本人観光客にとってもなじみ深いABCストアですが、その歴史やこだわりについては、意外と知らない方が多いのではないでしょうか。
今回は、実は日系人が創業し、今でも大切にその理念を受け継いでいるABCストアについて、歴史を振り返りながら解説します。
ABCストアのはじまりはカイムキの薬局

物語は今からおよそ100年前、1900年初頭に遡ります。
当時のハワイは、欧米諸国から持ち込まれた伝染病により人口が激減し、サトウキビ農園などの働き手不足が深刻でした。そこで日本や中国などアジア系の移民を募り、おもに日本の農村で貧困に苦しむ人々が、新天地での生活を夢見てハワイに移住したのです。
(ただしハワイでの新生活は必ずしも楽園ではなかったのですが…それはまた別の回にて)
そんな移民の1人が岡山県出身の小笹(Kosasa)氏です。1917年、小笹夫妻はマノアやカイムキの近くで日系人が多く暮らす「Palolo Valley(パロロ渓谷)」に小さな食料品店をオープンしました。
その息子であるシドニーは、小さい頃から家業を手伝い、大学は祖母のすすめでアメリカ本土で薬学を学んだといいます。おりしも太平洋戦争が起こり、日系人であるシドニーは恋人のミニーの家族ともどもミシガン州の収容所に入れられてしまうのですが、獄中で2人は結婚。これもいかにもアメリカらしいエピソードですよね。
ハワイに戻った2人は、薬学の知識を生かして、1949年に「カイムキ・ファーマシー」(後に「スリフティー・ドラッグス」に改名)を開業します。

(スリフティー・ドラッグスがあったとされるワイアラエ・アヴェニュー)
今では世界中からバカンス客の訪れるハワイですが、1950年代は、カイムキはもちろんワイキキですら今のように人が多くなく、のんびりした雰囲気だったそう。
しかしある時、ドラッグストアの会合で、ビーチリゾートの先進地・マイアミに行ったシドニーは、滞在客がホテル内の高級な売店ではなく、街角の雑貨店でさかんに買い物をしているのを見かけます。
「ワイキキもいずれこうなる」と確信したシドニーは、帰国後、薬局から業態を転換。食料品・サンオイルや浮き輪などのビーチグッズからお土産まで幅広く扱うコンビニエンスストア「ABCストア」の1号店を、1964年、カラカウア通りとビーチウォークの交差点にオープンさせたのです。

そこからはどんどん店舗が増え、2026年現在では世界中で82店舗、オアフ島のワイキキ周辺に37店舗が集中し、ラスベガス・グアム・サイパンにも展開しています。
この先見の明、本当にすごいですよね…!
ちなみにもっとも売れる商品は「水」「スパムむすび」「ゴザ」だそうです。
店名の「ABC」はなんの略?

ところで、「ABCストア」の名前の由来をご存知でしょうか。
- All Blocks Covered(すべての通りに店がある)の略
- Aloha Brings Customers(アロハはお客を呼び寄せる)の略
- Aloha Beer Company(アロハ・ビア・カンパニー)の略
など諸説ありますが、公式にはABC自体に意味はなく、当時「電話帳の最初に載りやすい」「変わった名前より覚えやすい名前がいい」という理由で選ばれたのだそうです。
ABCストアの前には、Kosasa氏のKをとって「Mister K(ミスターK)」と呼ばれていましたが、2009年には正式に全店が「ABCストア」に統一されました。
日本よりも日本的?受け継いできた創業者の想い

ABCストアは2024年に創業60周年を迎えました。
現在の経営者・CEOであるポール・コササ氏は、シドニーとミニーの4人の子どもたちの末っ子で、父同様に子どもの時から家業を手伝っていたそうです。日系ファミリーとあって「祖母が作ってくれた茶わん蒸しがとてもおいしかった」という思い出も語っています。
取材で「創業以来受け継いできたものは?」と聞かれたポール氏は「努力・責任感・そしてオハナ(家族)の大切さ」と答えています。
コロナで90%の従業員を一時休業させざるを得なかったものの、パンデミックが解消した後は、家族のようなつながりを持つ社員たちが戻ってきてくれて無事に復活したとのこと。
欧米では日本のような「お土産」文化がないため、ハワイのショップはアジア系、特に日本人の客単価が高い傾向があります。それだけに依存していた店はコロナ禍で日本人観光客が来られない時期に閉店してしまったケースも多いそうですが、ABCストアは本土向けと日本人向けの商品をバランスよく扱っていたのが生き残った理由でした。

それ以外にも、創業者であるシドニー氏が常に大切にしていたのは「従業員が幸せで、きちんとケアされているか」で、ポール氏は先代から受け継いだ理念として守り続けているといいます。
現在の日本では忘れられてしまったような、家族経営のぬくもりが伝わってきますね。
またアプリ全盛のこの時代ですが、いまだにレシートを100ドル分集めると記念品がもらえるというアナログな方法も守り続けています。お読みの皆さんも、ハワイ滞在の最終日、ABCストアのレジでマグカップやエコバッグと引き替えた経験があるのではないでしょうか。
ちなみに、ハワイのメディアからの取材で「日本に進出しないのか?」と聞かれたとき、ポール氏は、「日本は素晴らしい市場になると思う。でもABCストアはハワイの一部であり、ハワイ旅行の特別な体験と結びつくものであり続けたいんだ」と答えています。
さすが、よく分かっていますよね…!!

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