ハワイ研修レポート

ずっと愛されるハワイの正解とは

 海のある都会「ワイキキ」は、多くの人が集まり、賑わいをみせていた。明るい太陽と青い空、そんな空を映し出した広い海では、それぞれが思い思いに自分の時間を楽しみ、誰もがおおらかな気持ちになっているようであった。

 過去にアメリカ本土、ヨーロッパ、東南アジアなど、十数カ国を訪れた経験があるが、これほどにも至る所に地元地域を表現するものが置いてある国は見たことがない。ビーチへ行けば、デュークカハナモク像をはじめ、ハワイの著名人の銅像、そこへ自然とかけられたフラワーレイ、店へ行けば、HAWAIIやALOHAと書かれた雑貨類、モンステラやプルメリアの柄をあしらった水着やスカート、店員さんは必ずといっていいほどアロハシャツ。日本ではあり得ないことである。言うならば、帽子には”ありがとう”、桜柄のスカートに、店員さんの制服は袴か着物に足袋といったところだろうか。ハワイは人気の観光地であるということを加味しても、ハワイはあまりにも愛されすぎているのではないだろうか。

(いたるところにALOHAがあふれてる)

ここまでハワイが愛される要因としては、主に3点挙げられる。1点目はまず、都会と自然が交わる点であると考える。人気観光都市では、都会と自然のどちらかのみを満たしているケースが多い。ニューヨークは他に見ない大都市だが、自然と言えば、セントラルパークしかなく、本物の自然に触れるには数時間かかる。逆に、ナイアガラの滝などの自然を大いに味わえるような場所は、アクセスが悪く、滞在するにはどうしても不便さを感じる。その点ハワイは、ワイキキの中心街から歩いて5分で海辺へ到着、そこから10分も歩けば緑豊かな広々としたカピオラニ公園、バスで10分揺られてダイヤモンドヘッドで気軽な山登りまでできる。ここまで自然が近くにある一方で、都会的な街並みや便利さもある。海辺には、海を一望できる由緒あるホテルが立ち並び、街中には高級ブティック、アメリカ本土で人気のチェーン店や、なんでも揃う大型ショッピングモールなどがある。かつて時間通りに来ないと言われていたバスは現在、リアルタイムでバスの現在地がわかるアプリが開発されるなど、観光客にも使いやすく便利なシステムが確立されている。

2点目に安全性が高い点である。日本よりは犯罪発生率は高いものの、世界基準にするとハワイ州は比較的安全とされている。コロナウイルスの影響により貧富の格差は広がったとされるが、各国でテロや銃撃の危険性が問いただされている中、ハワイで注意すべきは、強盗やスリなどの軽度な犯罪が多いようである。この要因としては他地域に比べ、宗教格差や政治的格差が小さいことと、ハワイの島国としての国民性が挙げられる。1900年代に多くの日本人が移民として流入してきたことをきっかけに、アメリカ人と日本人が共存することになった。そのあたりから、他国文化や宗教の受け入れや、多様性が受けいれられたようである。また、大陸に住んでいる人種と違い、島国の人は競争心があまりなく、オープンな性格である人が多い傾向にあり、小さなまちによく見られるような「よそ者排除」の意識が薄く、観光客を受け入れる体制ができているのも特徴である。

 最後に、古き良きを大切にしたクラシカルさと、新しいものを取り入れたモダンさであると考える。私の祖父母は40年ほど前、父と一緒にハワイを訪れた。その時宿泊したのは、現在もワイキキ中心地に存在する「シェラトンプリンセスカイウラニ」である。当時の写真を見ても、今とほぼ変わらず、まるでタイムスリップをしたかのような感覚を味わった。この度の研修において、多数のホテルを訪れたが、どのホテルも建物自体は古くから使われているものが多く、昔から続くクラシカルなハワイを味わうことができた。時折、リノベーションをしたようなホテルもあったが、やはりハワイらしさを必ず取り入れ、加えるとすればビビットカラーなどの配色でモダンさを表現していた。文明や時代によって変化する中でも、昔ながらのものがあるとやはり人々は安心するのである。

以上の3点の要素から、私はハワイの魅力については以下のように考える。

まず、老若男女にとって魅力的であるということである。サーフィン目的の若い男性、ショッピング目当てのマダム世代、のんびり過ごしたい定年後の夫婦など、それぞれが思い思いに、安心して楽しむことができる。これは結婚式の会場としてハワイが人気な理由にも繋がっている。ハワイにはアクティブさと寛ぎがどちらも存在するのである。

 現代の人にとって、世の中が便利になり、その生活に慣れてしまう一方で、やはり心のどこかで自然を求めている。ハワイを代表するダンス”フラ”は自然を讃え、神に捧げるダンスとされている。これほどまでに自然を愛する文化が浸透していることは世界的に見ても珍しい。自然への愛や敬意が、島にいるだけで深く感じられるのだろう。

 最後に忘れてはならないのが、アロハスピリッツである。アロハやマハロなどの言葉は非常に精神性が高く、愛に溢れる言葉である。ハワイ州法にも登場するアロハスピリッツは人々と心と精神の調和とされており、日本の神道に似たものを感じる。アロハの語源である思いやり、調和、協調、喜び、謙虚などは、常に意識すべき言葉であるが、何かに没頭している時や焦っている時は忘れてしまうようなこともあるのではないだろうか。そんな時に「アロハ」と声を掛けられると、ふと我に帰る気持ちになる。そのような体験をこの研修で何度も体験した。バスの運転手さん、ホテルのロビーやお店、海でちょうど隣に座った男性など。これがハワイにかけられた魔法なのではないだろうか。修行へ行くわけでも、何かを断ち切るわけでもなく、ハワイの日常にはただただそこに「アロハ」が存在するのである。そんな日常を求め、都会や便利さの中に埋もれて忘れかけた「アロハスピリッツ」を思い出すため、そして心穏やかに愛溢れる場所を求めて、多くの人々はハワイにやってくるのだと考える。自然を愛し、穏やかに、生命に愛が溢れているような、そんな場所がハワイである。これからも真のアロハが宿る場所に人は集まるだろう。(Kaori Fujinawa)