ヴィンテージマンションの定義

ヴィンテージマンションとは、ヴィンテージワインやヴィンテージカーと同様に、ただ古いという事でなく、年数が経っても、高い価値を保ち続けるものを指します。しかしヴィンテージと呼ばれるマンションに明確な定義はありません。
「多くの人たちが価値を認める」ということは大前提ですが、それぞれの考えで定義して構わないということです。都心の希少な立地に立ち、利便性抜群なのに緑豊かだったり、都心とは思えない規模感がありながら静寂な住環境の中にあったり、敷地の入口には大きなゲートと守衛室があったり、また、建物のデザインや住戸プランなどにも特色があり、レアな海外の建築部材を外装に取り入れた建物や美術館にありそうなアートをエントランスロビーなどに飾った建物など様々です。『これぞヴィンテージ』とは、それぞれの価値観から生まれるというわけです。

あるマンション業界の商品企画に詳しい方が定義したヴィンテージの条件には『玄関ドアは内開き』というものもありました。おそらくその建物が欧米仕様だったか、海外建築を意識して建築されたものと想像できますので、単に「玄関ドア」だけというわけでなく、その建物自体の持ち味だったのではと思います。

因みに日本は靴を脱ぐ習慣から玄関ドアは外開きになっています。欧米など海外住宅のドアが内開きである理由は防犯上の理由からだといわれています。不審者が無理やり中に入ってこようとしたとき、内開きのドアなら全体重をかけてドアを押して閉めることができ、さらに家具を立て掛けるなどすれば、侵入を防ぐことができるからです。また、欧米住宅の様に玄関スペースにゆとりがあるからこそ可能な設計というわけです。

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そもそもヴィンテージマンションの価値はどこにあるのでしょうか。
経済的な市場価値が下がりにくいことが理由の一つとしてあげられますが、何よりの価値は暮らしの豊かさを得られることではないでしょうか。その街や建物の歴史と佇まいに酔いしれ、また、今となっては得難い立地に位置し、その特性を最大限に活かしながら、そこに暮らす人たちのライフスタイルを色濃く反映させる、それがヴィンテージマンションといえます。つまり、その建物で暮らすことでしか得られない時を手に入れることができる、それが最大の価値といえます。モノのように単にコレクションしているだけでなく、あくまでも暮らしを基軸にしているのがヴィンテージマンションというわけです。

私も長く不動産業界に携わっている関係で、マンションの購入を検討されているお客様から、マンションの価値についてよく聞かれます。投資や資産などとして不動産を購入される方は別として、住まいをお探しのお客様には、「お客様自身やご家族がそこで幸せに暮らしていくという事が、何ものにも代え難い本当の価値です」とお答えしています。高級なヴィンテージマンションであろうと、都心を見渡すタワーマンションであろうが、暮らしがイメージ出来ないものは、何の価値もありません。住まいとはそういうものだと思います。