オックステールスープとハワイ

「次のハワイで何を食べたい?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?

「パンケーキ」「ロコモコ」「アサイーボウル」…なども人気ですが、ハワイが大好きな人が高確率で「これだけは食べる!」と言うメニューが、実は今回ご紹介する「オックステールスープ」なんです。

OX TAIL SOUP(オックステールスープ)とは

OX TAIL SOUPの“OX”とは雄牛のことで、テールは尾。牛の骨付き尾のぶつ切りを香味野菜や香辛料、ピーナッツなどとホロホロになるまで長時間じっくり煮込んだ旨味たっぷりのハワイのローカルフードです。日本の韓国料理店で目にするテールスープとは、具材や味付け、スープの色などが異なります。

ハワイでは街の食堂やレストランなど、昔からローカルが通う多くの店でオックステールスープが提供されています。

ハワイのオックステールスープの歴史

ハワイ王国では、1700年代後半~1800年代に西洋との交易で持ち込まれた伝染病によって人口が激減し、その穴埋めの労働力として日本・韓国・ポルトガル・中国などの移民を受け入れてきました。

現在のハワイには移民たちの子孫が開いた飲食店がたくさんあり、各国の食文化がミックスされた料理も多く見られます。

そんな中、1960年代にカピオラニ通り(Kapiolani Boulevard)に日系退役軍人がオープンさせたのが「カピオラニ・コーヒーショップ」です。現在は、ホノルルフェスティバルの会場としても知られる「ハワイ・コンベンション・センター」がある場所でした。

~現在のカピオラニコーヒーショップ~

お店のメニューは当時からアメリカ・日本(沖縄)・中国・フィリピン料理などがカルチャーミックスされたものだったそうです。その中でも、隣接する「アロハモーターズ」の従業員たちにとりわけ人気だったのがオックステールスープだといいます。(参考記事:Star Advertiser

その後、カピオラニ・コーヒーショップはカリヒ地区にあるボウリング場「カム・ボウル(KAM BOWL)」の中へ移転して営業を始めます。ここでも相変わらずオックステールスープは大人気で、日本でもハワイ”通”の人たちに広まり始めました。当時、この味を求めてバスを乗り継ぎ訪れた方もいるといいます。

2007年にボウリング場は閉鎖されましたが、隣接する「カメハメハ・ショッピングセンター」に、ボウリング場の名前を引き継いだ現在の「KAM BOWL RESTAURANT(カム・ボウルレストラン)」がオープンしました。

またカピオラニ・コーヒーショップもアイエアの「ワイマル・ショッピングセンター」へ移転し、現在も営業を続けています。ワイキキからはバスを乗り継いで1時間以上とややアクセスは不便ですが、パールハーバー観光などの機会に立ち寄ってみると、60年以上変わらぬ味のオックステールスープが味わえます。

そして、このカピオラニ・コーヒーショップの味を引き継いだオックステールスープの名店といえば、やはり皆さんがもっともよく耳にするのが「朝日グリル」ではないでしょうか。

オーナーは別ですがオアフ島に2店舗あります。ホールフーズやパタゴニア・SALTなどからほど近いワード店、ケアウモクから移転したカイムキ店と、どちらも観光客が訪れやすい場所で、たびたび日本のTV番組にも登場しています。

~Asahi Grill ワード店~

ワード店は昔ながらの食堂の雰囲気が最高。カイムキ店は和モダン+ウッディな内装でちょっとおしゃれなイメージです。

面白いのは、各店舗の看板や横断幕に「Home of the Famous OXTAIL SOUP(元祖オックステールスープの店)」「AKA KAM BOWL (あのカムボウル発祥)」のように書かれていること。 

どのお店もカピオラニコーヒーショップにルーツを持ち、歴史や伝統の味を守っていることが分かります。

~朝日グリルのオックステールスープ。パクチーが苦手な方は別添えで~

知る人ぞ知るタナカサイミン

ホノルル、イウィレイ地区にある、ロコに愛され続ける食堂です。店名どおりサイミンが有名なお店ですが、ファミレスのようにメニューは豊富です。ここでも、美味しいオックステールスープが食べられます。

~昼時はローカルの方々で満席になりますので、時間を避けて行くのがオススメ~

オックステールスープの食べかた

ハワイの多くのお店では、オックステールスープは以下のセットで提供されます。

  • 丼にホロホロのオックステールが入ったクリアなスープ
  • スクープライス(白いご飯)1~2盛り
  • みじん切りのショウガを小鉢にたっぷり
~タナカサイミンは昆布の煮つけ付き~

食べ方に決まりはないのですが、ローカルはたいてい小鉢のショウガにアロハ醤油を注ぎ、まずは肉をそこにつけて食べます。

次にライスをレンゲに乗せて少しスープをすくい、好みでショウガ醤油も少しつけて食べます。ショウガをスープに入れて味変する人もいます。

後半になると、丼に残ったスープにごはんを全部投入し、お茶漬けのように食べます。

白いごはんをフライドライス(炒飯)に変えたり、麺入りの「オックステールラーメン」を注文する人も。

なお、山盛りトッピングされたパクチー(香菜・コリアンダー・Cilantro・チャイニーズパセリなど、色々な呼び方あり)はオックステールスープの味を引き立てる名脇役ですが、苦手な人もいるかもしれません。

お店やスタッフさんによっては先に「パクチーOK?」と聞いてくれることもありますが、注文時に自分から「ノーパクチー」と言えば抜いてもらえます。

とはいえ「パクチー苦手なのに、ここのは食べられる」「朝日グリルでパクチーが平気になった」という人もいるほど(!)なので、ぜひパクチー入りを試してみて欲しいところです。

迷う場合は「Can I have the pak choi separately?(パクチーを別添えにしてもらえますか?)」と頼んでみるのも良いですね。

オアフ島のオックステールスープが美味しい店

いまやハワイの定番料理ともいえるオックステールスープは、定番の朝日グリルやカムボウル、カピオラニコーヒーショップ以外でもいろいろな店で食べられます。

ハワイのローカルファミリーレストラン

ハワイ発祥のファミレスで、オアフ島中心に20数店舗を構える「Zippy's(ジッピーズ)」にもオックステールスープがあります。こちらはパクチーとショウガのほかに、ピーナツとマッシュルームが入ったスタイル。

「ココパフ」などのお菓子も人気の「Liliha Bakery(リリハベーカリー)」のメニューにもちゃんとオックステールスープがあります。

リリハベーカリーのオックステールスープ

リリハベーカリーはニミッツ本店やアラモアナのほか、ワイキキのInternational Market Place(インターナショナル・マーケットプレイス)にも店舗があるので、一番手軽に行ける場所と言えそうですね。

穴場・注目の店

なぜかオックステールスープはボウリング場に縁があるようです。

ハワイでもっとも歴史ある情報誌「HONOLULU MAGAZINE」が運営するグルメサイト「FROLIC HAWAII」が2022年に行った「オックステールスープが美味しいオアフの店ベスト5」の読者投票でみごと1位に輝いた「The Alley Restaurant(ジ・アリー・レストラン)」は、アイエアにあるボウリング場「Aiea Bowl」併設のレストラン。

黒い醤油ベースのスープに自家製ポン酢がついてくるというオリジナリティのあるオックステールスープがローカルに人気です。

ワイキキからバスで行くには1時間以上かかりますが、レンタカーなら20分ほどなので、興味のある方はぜひ人気No.1の店へ訪れてみてはいかがでしょうか?

一方、アラモアナS.C.にある高級デパート「ニーマン・マーカス」1階の「エスプレッソバー」は、買い物の合間に気軽にコーヒーやカクテル・軽食が楽しめるスペースですが、毎週木曜だけオックステールスープが登場します。こちらはピーナツに加えてシイタケやチンゲン菜が入ったかなり中華風のルックス。

数量限定のため、お昼前に売り切れることが多いそうなので、気になる人は早めにぜひ訪れてみてください。


ハワイの旅でアクティブに動き回って疲れたとき、冷たいドリンクや空調で身体が冷えてしまったときに、優しく染みわたるオックステールスープは、一度飲んだらきっと忘れられなくなる味。

ぜひ次のハワイで楽しんでみてくださいね。

しばらく行く予定がない方は、東京・目黒にあるALOHA LIVINGカフェ・ショールームへもひとときのハワイ気分を味わいにお立ち寄りください。